相続時精算課税制度は生前贈与に有効か?!相続時精算課税制度を完璧に理解しよう!

相続時精算課税制度は生前贈与に有効か?!相続時精算課税制度を完璧に理解しよう!



相続対策のひとつに「生前贈与」があります。贈与によって家族に財産を引き継ぐことで、相続が発生した際の相続税が課税される遺産総額を抑えることが出来ます。

相続税対策の最も重要な点は、相続税が課税される遺産総額を上手に抑えることです。その点では生前贈与は相続対策として有効と言えます。しかし、贈与によって引き継ぐ財産には「贈与税」が課税されます。相続税を抑えるつもりが、予想以上の贈与税が課税された!となっては本末転倒です。そこで、今回は、贈与の手段の一つである相続時精算課税制度についてご紹介します。

1.相続時精算課税制度ってどんな制度?

相続時精算課税制度とは、65歳以上の直系尊属(父母・祖父母)から20歳以上の子(もしくは孫)に対して最大2,500万円まで贈与税が課税されず、相続時精算課税制度によって贈与された贈与財産は贈与者の相続が発生した際に相続財産として相続税の課税対象になるという制度です。

相続時精算課税制度は生前贈与に有効か?!相続時精算課税制度を完璧に理解しよう!

最大2,500万円は通算となるため、相続が発生するまでの間の贈与が2,500万円を超えなければ贈与税は課税されません。また、2,500万円を超えた金額から一律20%の贈与税が課税されます。

相続が発生した際に、相続時精算課税制度の利用ですでに贈与税を納めている部分に対しては相続税から控除することが出来ます。また、支払っている贈与税が収める必要のある相続税よりも上回っている場合には還付を受けることも出来ます。

2.相続時精算課税制度の贈与税と相続税

相続時精算課税制度の適用を受けている贈与は、2,500万円まで贈与税が課税されません。先にも述べたように、2,500万円を超えた金額には一律20%贈与税が課税されます。

例を使って考えてみましょう。

父が息子にH27年に相続時精算課税制度を利用して1,000万円の贈与を行いました。その翌年(H28 年)にさらに1,000万円、翌々年(H29年)に1,000万円の贈与を行いました。

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このようなケースでは、H27年とH28年の贈与は2,500万円を超えていないため贈与税の課税対象とはなりません。

しかし、翌々年H29年の1,000万円を加えると合計が3,000万円となる500万円オーバーします。

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この500万円に対して贈与税が課税されることになります。贈与税は一律20%なので、この年に息子は100万円の贈与税を納める必要があります。

仮にH30年に父が亡くなり相続が発生したとします。その場合には、息子が生前に受けた贈与3,000万円が取得する相続財産に含まれることになります。例えば、相続によって取得した財産が1,000万円だとすると、相続時精算課税の3,000万円と合わせて4,000万円がBの相続によって取得した財産となり、相続税の課税対象となります。

相続税が500万円だった場合、Bがすでに納めている贈与税分を控除することができるため500万円-100万円となり、納める相続税額は400万円となります。相続税が100万円だった場合には、100万円-100万円で相続税は発生しないことになりますね。80万円であれば80万円-100万円となり、20万円は還付されることになります。

3.相続時精算課税制度の注意点

最大で2,500万円まで贈与税が課税されずに財産を譲り渡すことが出来るという点から相続時精算課税制度を使ったほうがいいじゃない!と思われるかと思いますが、制度利用を決める前に、注意点も確認しておきましょう。

(1)2度と暦年贈与には戻れない!

贈与の方法は暦年贈与と相続時精算課税の2つがあります。この2つは併用することが出来ません。つまり、一度、相続時精算課税を選択してしまうと暦年贈与は使えなくなってしまいます。

暦年贈与は、110万円の基礎控除があります。1月1日~12月31日までの1年間に贈与によって貰った財産が110万円を超えなければ贈与税は課税されません。

もちろん、受け取った財産が相続財産とみなされることもありませんので、相続が発生した際に相続税が課税されるということもありません。

しかし、相続時精算課税は2,500万円までは贈与税が課税されませんが、2,500万円を超えた金額に対し20%の贈与税が課税され、相続が発生した場合には、相続時精算課税によって受けた贈与は相続財産となり相続税の課税対象となります。

一度に、大きな金額の贈与を行う場合には、相続時精算課税を選択することで節税となる可能性はありますが、大きな金額を贈与する予定がないという場合には暦年贈与の方が良いケースもあります。

(2)孫への贈与は相続税が2割加算される可能性がある

相続時精算課税は65歳以上の直系尊属から、20歳以上の子や孫に対しての贈与で利用できる制度ですが、この孫への贈与を行う場合に注意が必要です。

相続時精算課税によって受け取った財産は相続が発生した時に、相続財産として相続税の課税対象になります。相続によって財産を取得することになる相続人は、民法によって定められています。

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上記に該当する方以外が財産を取得する場合には、本来の相続人では無いということから相続税が2割り加算されるという決まりがあります。

被相続人の孫は本来の相続人には該当しません。そのため、相続時精算課税によって贈与を受けた場合には、相続発生時の相続税が2割り加算されることになるため、想定していたよりも相続税が高くなるという可能性があります。

(3)評価の変動がある財産の贈与

相続時精算課税によって贈与する財産が価値の変動するものである時には注意が必要です。相続が発生し、相続税を計算する際に、相続時精算課税によって受けた贈与財産の評価額は相続発生時ではなく贈与時の評価額となります。

価値が上がる可能性がある場合には、贈与時の評価となるため実際の価値よりも低く評価される可能性がありますが、反対に価値が下がってしまった場合は、実際の価値よりも高い評価になるということを理解しておきましょう。

(4)還付を受ける場合には相続税の申告が必要

相続税には基礎控除があり、基礎控除を下回る場合には原則として相続税の申告を行う必要はありません。(特例等の適用を受けている場合は申告が必要)

すでに支払っている贈与税がある場合で、相続税が基礎控除以下の場合には、相続税の申告書を提出することで、支払った贈与税の還付を受けることが出来ます。この手続をご自身で行わないと税金の還付を受けることはできませんので、上記のような状況の場合には、相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告手続きを行う必要があります。

(5)不動産を贈与する場合

不動産の贈与には、登録免許税と不動産取得税という税金が発生します。相続時精算課税を利用して不動産を贈与する場合、この2つの税率が相続によって取得した場合と比較して、高く設定されています。

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3,000万円の不動産を相続時精算課税で贈与した場合、150万円の税金が発生しますが、相続の場合には12万円です。不動産取得税と登録免許税だけで比較すれば、138万円も税額が変わります。不動産を贈与する場合には、贈与税や相続税以外の税額も検討しておく必要があります。

また、被相続人の居住用や事業用の宅地等には小規模宅地等の特例という相続税の評価額を減額することができる特例がありますが、贈与によって譲ってしまっている宅地等には適用されませんので、相続税対策として不動産の贈与を検討されている場合には、これらを十分に検討して行うようにしてください。

4.相続時精算課税制度の利用方法

相続時精算課税制度を利用する場合には、受贈者(贈与を受けた方)が税務署に以下の書類を提出します。

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申請は最初に贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日まで間に行います。忘れずに申請してください。相続時精算課税の適用を選択していても、申告を忘れてしまうと暦年贈与として扱われます。先にも述べたように、暦年贈与は110万円が基礎控除です。相続時精算課税の予定で贈与を受けたつもりが申告を忘れて暦年贈与と判断されると、高額な贈与税を納めなければならなくなってしまうので注意してください。

まとめ

今回の記事では、相続時精算課税の注意点などについてご紹介させていただきました。相続時精算課税は相続が発生した際に課税される相続税が基礎控除を下回る、もしくは少し超える程度になるというケースでは非常に有効な生前贈与の方法です。

しかし、よく考えてから選択しないと場合によっては相続税対策に繋がらない可能性もあります。相続対策として生前贈与を検討されている場合には、相続に強い税理士などに相談し、ご自身の状況にあった方法を選択されることをオススメします。