相続税はじめてガイド--節税対策と税の計算方法を網羅的に解説!

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相続税は平成27年に大改正され、相続税を課税される人がこれまでの1.5~2倍に増加すると言われております。まずは相続の基礎知識を身につけ、相続発生時にしっかりと対応をしましょう。ここでは、相続税の基礎知識と相続対策するための情報を網羅的に紹介します。

目次

1.相続に必要な知識

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相続において、最低限理解しておかなければならない用語が「相続人」「相続分」「遺留分」の3つとなります。

  • 相続人: 亡くなった人から財産を取得する人。なお、財産を残して亡くなった人は被相続人。
  • 相続分: 相続財産をもらう割合のこと
  • 遺留分: 最低限財産を相続する権利

相続人と似たような意味の言葉に「法定相続人」という言葉があります。法定相続人とは民法によって定められた「財産を相続する権利を有する人」のことを言います。一方、相続人は「実際に財産を受け取る人」のことを言います。財産を受け取る人という意味では、法定相続人=相続人という考え方は間違いではありません。

しかし、法定相続人は財産を相続する権利を持っている人となるため、相続放棄をした人も含まれます。相続人は実際に相続する人を指すため、相続放棄した人は含まれないという違いがあります。

 

2.相続の流れ

相続財産を残して亡くなった場合、相続が発生します。手順は下の図の通り。
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死亡届提出

まず、死亡後は7日以内に死亡届を提出してください。提出先は、死亡地・死亡者の本籍地・届出人の住所地のいずれかの区市町村役場です。死亡届提出時に必要なものは、医師による死亡診断書、届出人に印鑑です。葬儀社が代理で届出をすることも可能です。

遺言の有無を確認

遺言書の有無により、遺産の分割の方法が変わります。遺言書が無い場合は「遺産分割協議」という方法で財産の分割を行います。相続分は基本的には民法に定められている法定相続分を目安とします。
 
遺言書がある時はその内容に沿って遺産を分割することになります。遺言には「公正証書遺言」(公証人に依頼して作成した遺言)と、「自筆証書遺言」(自分で作成した遺言)の2種類があります。

公正証書遺言は、封印されている場合は家庭裁判所提出前に開けてはいけません。もし、開けてしまった場合5万円以下の過料が科されるので注意してください。自筆証書遺言の場合は、保管者又は遺言を発見した相続人が遺言を家庭裁判所に提出し、遺言書の存在及び内容を確認するために調査する「検認」という手続きが必要となります。自筆証書遺言の場合は封印がれていても、されていなくても「検認」が必要です。

相続人を確定する

遺言に記載がある場合には、原則としては、その遺言通りに相続人を確定しますが、遺言がない場合は以降説明します。

法定相続人が誰になるかはきちんと定められており、順位も決まっています。まず、被相続人の配偶者は常に相続人となります。そのため順位はありません。第一順位は子、第2順位は父・母、第3順位は兄弟姉妹となります。このようにして決まった先順位から先に、財産を相続する権利を持つことになります。

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なお、養子縁組の子は実子と同じ扱いとなり、原則は第1順位の相続人となります。しかし、法定相続人に含むことができる養子の人数には以下のようにルールがあります。

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つまり、最大でも2人までは法定相続人の人数として数えることができますが、3人目以降は法定相続人の人数に含むことはできません(相続人として財産を相続することは可能)。

被相続人の所得税の申告と納付

次のステップ相続放棄に関しては後述するとし、ここでは、所得税の申告と納付である「準確定申告」について。相続人は、亡くなった年の1月1日から死亡の時までの亡くなった人の所得税について、相続開始を知った日の翌日から4カ月を経過した日の前日までに、亡くなった人の死亡当時の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

相続財産の調査・評価

財産評価の調査と評価に必要なものの一例を以下に挙げておきます。

  • 固定資産税納税通知書
  • 固定資産税の名寄帳(不動産の一覧表)
  • 不動産登記事項証明書
  • 公図、測量図、建物所在図、住宅地図、路線価図、都市計画図、森林簿、森林計画図
  • 生命保険証券、損害保険証券、保険の権利評価証明書、解約返戻金の試算表
  • 通帳、取引明細書、残高証明書
  • 四季報、IR情報
  • 過去3年分の所得税確定申告書、減価償却明細書、償却資産税申告書、過去3期分の法人税申告書
  • ゴルフ会員権の証券
  • 現地確認(評価減要素の調査、現況確認、図面との整合性確認)
  • 現物確認(規約・規定の確認、財産的価値の有無の確認)
これらの書類から財産評価明細書を作成し、最終的な財産をまとめた資料として、財産目録を作成します。財産評価は非常に複雑なので相続税に特化した税理士に依頼した方が良いでしょう。

遺産分割協議書の作成

遺言書が無い場合は、まず、相続人全員が集まって遺産分割協議をします。ここでは、相続財産をどのように分けるか、相続人全員で話し合って決めます。この内容をまとめたものを遺産分割協議書と言います。作成する際のポイントは以下の通り。
  1. 用紙の大きさや形には特に決まりはありません。
  2. 手書きでもパソコンで作成してもどちらでも問題ありません。
  3. 相続財産について記入漏れがあると、記入漏れをした財産についてのみ、遺産分割協議をしていないとみなされてしまいます。
  4. 相続人(相続する人)全員が手書きで署名し、実印を押します(代理人を立てることは認められておりません)。
  5. 「相続人全員で協議した」という文言を入れることをオススメします。
  6. 家、土地などの不動産について記載する際には、登記事項証明書を書き写しましょう。
  7. 遺産分割協議書は提出用と控用(保管用)の2部作成しておくことをオススメします。

上記のポイントをおさえておけば、基本的には遺産分割協議書は有効なものとなります。

相続税の申告書の作成

まず、相続税額がある人は申告書を提出しなければいけません。また、税額が0であっても「相続税の配偶者控除」や「小規模宅地等の特例」などといった規定の適用を受けるためには申告書の提出をしなければいけません。
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今までは、これら2つの要件に当てはまる人はあまり多くはありませんでした。
相続税では基礎控除額(その金額までは税金がかからないという金額)がとても大きかったため、一部の富裕層(人口の約4%)以外は相続税とは無縁という人が多かったのです。
しかし、平成27年の税制改正により基礎控除額が引き下げられたため、今後は相続税の申告書を提出しなければならない人が増えることが予想されています。
相続税の申告書には提出期限があり、今回死亡した人(被相続人)が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月が原則です。
相続税の申告書は、被相続人が亡くなった時に住んでいた場所を所轄する税務署に提出します。申告書は二部作成して税務署で受付印を押してもらい、一部を控えとして保管しておくことをお勧めします。
 

遺産の名義変更手続き

名義を変更するために必要な書類は、以下の通りです。

  1. 亡くなった人の戸籍謄本(出生から死亡まですべて)
  2. 亡くなった人の住民票の除票
  3. 相続人全員の印鑑証明書
  4. 相続人全員の住民票
  5. 不動産の固定資産評価証明書
  6. 不動産の全部事項証明書(法務局)
  7. 遺産分割協議書

これらを用意したら、登記申請書を作ります。法務局のサイト内ページにひな形があるので、自分ですべて記入して作成します。次は1~7の書類と登記申請書を法務局へ提出します。これで、法務局に書類を提出してから約2週間後に、新しい権利証が発行されます。この新しい権利証を受け取ったら、名義変更手続きはすべて完了です。

3.相続税はどのように計算するの?

相続財産を取得したら、基本的には相続税を支払う必要があります。その相続税はどのように計算されるのかを把握しましょう。

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No.1 課税価格の合計額の求め方

課税価格は下の計算式で求められます。

課税価格=財産-債務

財産とは、建物・土地・有価証券・銀行預金・定期預金・生命保険・死亡退職金・葬式費用・非上場株式などがそれにあたります。

債務とは、銀行借入金・未払医療費・被相続人の所得税等・通夜費用・葬式費用(仮葬式、本葬式)・お寺へのお布施などが対象となります。ちなみに、財産から除外できないものの例として、墓地や祭具(仏壇・神棚等)、遺言執行費用、訴訟費用などがあります。

No.2 遺産に係る基礎控除額の求め方

基礎控除額は下の計算式で求めることができます。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

法定相続人の数は、相続税法上の相続人のことです。相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとして人数を計算します。

No.3 法定相続分

法定相続分とは、民法で定めれている相続人ごとの取り分の目安です。相続分は、誰が相続人いなるかによって変わってきます。下の表を確認してください。

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No.4 相続税の税率

相続税の税率は、平成27年に改正されています。法定相続人ごとのの取得金額が2億円以下までは変更がありませんが、2億超~3億以下は改正前40%→改正後45%、6億円超は改正前50%・改正後55%と変更されています。これまでは6段階の税率でしたが、8段階の税率に変更し、増税になっております。

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No.5 相続税の総額

相続税の総額は、次のように計算をします。

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⑴ 各人の課税価格の合計額を計算
⑵ 遺産に係る基礎控除額 (3,000万円+600万円×相続人の数) を計算
⑶ 課税遺産額    ⑴-⑵
⑷ 法定相続分に応ずる各取得金額(千円未満切捨)
⑸ 相続税の総額の基となる税額     ⑷×税率
⑹ 相続税の総額(百円未満切捨)  ⑸の合計額
 

No.6 相続人ごとの税額を計算

相続税の総額(相続人全員分の相続税)が計算できたら、次に相続人ごとの納付税額を計算します。

相続人ごとの税額=相続税の総額×相続人ごとの課税価格÷課税価格の合計額

No.7 税額控除

No.6の税額から税額控除をした金額が実際に納税する額となります。税額控除の代表例としては、「贈与税額控除」「配偶者控除」「未成年者控除」「障害者控除」「相次相続控除」「外国税額控除」などが挙げられます。

4. 相続税の節税対策

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相続税の節税対策には、生前対策と、死亡後に行う対策があります。生前対策としては、以下があります。

生前の相続税対策

  • 貸家(アパート)の購入: 現金5000万円の相続税評価額は5000万円ですが、そのお金で貸家を購入したとすると、相続税評価額は3500万円となり、評価額は約3割減となり、節税となります。また、貸家(アパート)の敷地は、貸家建付(賃貸用の建物を建てて他人に貸している土地)となり、約2割評価額が下がります。 
  • 生命保険を活用: 生命保険の死亡保険金は相続税の対象ですが、遺族の生活を守るために「500万円×法定相続人の数」だけ非課税枠が認められています。現金だとそのままの金額が相続税の対象になりますが、生命保険の死亡保険金で受け取ると、非課税枠分を控除した金額に対して相続税が課されるため、現金で受け取るより税額が少なくなります。
  • 養子縁組: 相続人が1人増えると、基礎控除額が600万円増加し、生命保険の非課税枠も500万増加します。さらに、相続人が増えると相続人1人あたりの受け取り金額が少なくなり、税率の区分が変わって税金が安くなることがあります。
  • 信託を活用: 信託を利用した代表的な節税方法が「土地信託制度」。これは、土地所有者と信託銀行との土地活用共同事業で,、土地所有者はその土地を信託銀行に預け、信託銀行がその土地を有効に活用し、そこから生み出される利益を分配する制度です。信託銀行は、土地所有者から土地の信託を受けて土地所有者の移転を行います。その土地の上に建物を建てて賃貸し、その家賃を土地所有者に配当として支払います。信託期間終了後、土地は建物付で土地所有者に返還。信託された土地は貸しビルやマンションが建ち、貸家建付地として評価減が認められますので、相続税が節税されるというものです。
  • 110万円の基礎控除を活用: 贈与税は一人が1月1日から12月31日までの間に取得した財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの金額に対してかかります。つまり、1年間に取得した財産の合計額が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も不要となります。110万円の基礎控除は贈与を受ける人ごとに認めら、例えば4人の子に毎年110万円ずつ10年間贈与し続けると合計4,400万円の財産を無税で贈与することができます。
  • 配偶者への贈与: 結婚して20年以上の配偶者に対して住宅または住宅取得のための資金贈与があった場合、2,000万円を控除する制度があります。110万円の基礎控除もあるので、基礎控除110万円+贈与税の配偶者控除2,000万円で合計2,110万円まで贈与税はかかりません。この制度は、同一の配偶者間では一生に一度しか適用されません。
  • 相続時精算課税制度: 生前、2,500万円までなら贈与しても贈与税がかからない特別控除額があるという制度。
  • 住宅取得資金贈与: この制度を活用すれば、最大1,200万円まで住宅取得等資金贈与にかかる贈与税が非課税となります。暦年贈与(その年の1月1日~12月31日までの間に贈与を受けた財産額の合計)の基礎控除額をプラスすることで、さらに110万円がプラスされ、合計1,310万円まで贈与税が非課税となります。対象者は、父母および祖父母(直系尊属)からの贈与で、対象は贈与する年の1月1日に20歳以上の子・孫に限ります。適用要件は、平成33年12月31日までに契約した住宅取得に適用となりますが、対象住宅の要件が非常に細かいので、不動産会社や税理士に相談するとよいでしょう。
  • 教育資金の贈与: 平成25年4月より「祖父母からの教育資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税制度」が開始となりました。子1人につき1500万円までの贈与が非課税になる制度ですが、子が30歳までに使いきれず資金が口座に残った場合は、残額に対し贈与税が課税されます。なお、110万円の基礎控除と併用可能です。対象となる教育費は、「学校の教育費」と「学校以外の教育費」の2区分。学校教育費は、学校に直接支払うものの他に教材や制服なども対象ですが、塾や習い事の費用は指導者に直接支払うもののみが対象です。
  • 広大地評価を利用: 大きな土地は、「広大地評価の利用」で評価額が下がる可能があります。土地の評価額が最大65%減となりますが、広大地評価は要件が非常に複雑なため、相続税に特化した税理士に相談ましょう。
  • 小規模宅地の特例を利用: 小規模宅地の特例(事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例)は、相続財産のうち、①被相続人(相続財産を遺して亡くなった人)または被相続人と同一生計(一緒に暮らしている)親族の事業用または居住用になっていた宅地等 ②建物等の敷地となっているもの といった両方を満たしたものについて、一定の面積までの土地についての評価額を減額できる制度です。土地の要件が複雑ではありますが、50~80%の評価減が可能となり、非常に節税効果が高いです。
  • お墓や仏壇を生前に購入: お墓や仏壇は、相続発生前に購入しておくだけで相続税の節税効果があります。

死亡後の相続税対策

死亡後の対策としては、以下の3つが代表的です。

  • 相続税の減額: 相続財産に土地があった場合、その土地は誰が評価をするかで評価額が大幅に異なります。土地は原則として時価で評価しまが、市街地は「路線価方式」で、それ以外は「倍率方式」で評価できます。また角地や裏路地などの場合は「角地加算」「2方向路線加算」等の加算・減算を行うといった様々な評価基準があるため、誰が判断するかによって相続税の計算基礎となる相続税評価額に大きな差が生じます。評価額を低く設定するためにも、相続税の専門家や不動産鑑定士に評価をしてもらうとよいでしょう。また、「広大地評価」を利用することができれば、最大で65%の評価減が可能となっております。
  • 納税方法の検討: 相続税は現金で支払う以外に、相続税を現金一括で支払うことができない場合は「延納」、現金の代わりに土地などで相続税を収める「物納」といった納税方法があります。延納の場合は利子が付きます。物納の場合は一般的には収益性の低い物件から物納すべきと言われていますが見極めは厳しいので相続税専門税理士に相談してみるとよいでしょう。
  • 還付の検討: 相続税専門ではない税理士に相続税申告をして納税している場合、還付の可能性が高いです。さらに、広大地、つまりは標準的各地規模より著しく大きな土地(都市部で500㎡、地方では1000㎡)、戸建の用地として不動産の業者が買い取ることが可能な土地を相続している人も還付の可能性が高いです。また、亡くなった年の所得が年金収入だけであったとしても、「準確定申告」をすることで還付の可能性も高くなるので確認が必要です。

5.相続の争いは防げる?

毎年100万人以上の死亡者数があり、その中で遺産分割に関する調停事件は約1万件、審判事件は約2,000件あり、約1%の方が相続で争っているのが現状です。実際は数値にはあらわれないもっと多くの相続争いが起こっていることが予想されます。

では、その争いを避けるためにはどんな対策が必要なのでしょうか。争いを防ぐためには、「遺言」が非常に大事になります。

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遺言書には遺言者がご自身で作成する「自筆証書遺言書」「秘密証書遺言書」と、公証人に依頼して作成する「公正証書遺言書」の3つがあります。
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自筆証書遺言書と秘密証書遺言書は遺言者が保管しますが、公正証書遺言書の場合には原本は公証役場で保管され、遺言者は作成時に写しを受取ります。遺言者が亡くなった後、相続人等が公証役場で名前と成年月日、被相続人との続柄等を知らせると「公正証書遺言検索システム」で検索をしてもらうこともできます。つまり、公正証書遺言の場合には、家で遺言書が見つからなくても問題ないのです。
 
公正証書遺言を作成するためには、司法書士や税理士に依頼する必要があります。その際の料金は、財産がどの程度あるかで変わりますが、大体10万円~30万円程度と考えておくとよいです。だた遺言を残せばよいわけではなく、専門家と相談して遺言書を作成することが争いを防ぐためには必要となります。

6.相続放棄とは

親が亡くなれば、その子が親の財産を相続します。この「財産」には、不動産や預貯金、株式、現金などプラスの財産だけでなく、借金、つまりマイナスの財産も含みます。マイナスの財産は具体的には、住宅ローンや小切手、買掛金、未払いの各種税金、家賃・地代、医療費などが挙げられます。子はこういった親のマイナスの財産も相続するため、原則として返済しなければなりません。相続税はじめてガイド--節税対策と税の計算方法を網羅的に解説!

このとき、親に借金以上のプラスの財産があれば特段問題はありませんが、マイナスの財産の方が多い場合、いわゆる「債務超過」だった場合が問題です。この時、相続放棄すれば借金は返済しなくて済みます。相続放棄には期限があり、この点に注意です。

相続放棄の期限は、民法第915条に「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」と定められています。曖昧な表現で、専門家の間でいくつかの説があるほどですが、相続人(相続する人)は、相続することを知った時から3カ月以内に、相続するか、相続放棄するかを選択する必要がある、と覚えておけばよいでしょう。

ただし、悪質な金融会社の場合、3カ月以降に督促や差し押さえをすることも。これでは前述の相続放棄の期限を過ぎていますよね。このような場合は、判例を見ていると3カ月を超えていても相続放棄の申述が受理されることがあります。

このようなケースでは、借金があることをまったく知らなかった状況を書面にし、家庭裁判所へ相続放棄を申請しましょう。状況によっては、申請が受理される場合があります。

7.未成年が相続する際の注意点

未成年者は原則として自身の判断で法律行為を行うことができません。法律行為とは、法律上の一定の効果を生じさせる行為をいい、売買や贈与、相続における遺産分割などもその一つとされます。未成年者が法律行為をする場合は、法定代理人(一般的には親)の同意が必要です。ただ、相続に関しては法定代理人を代理人とすることが適当でない場合があります。

未成年者の親は同じく相続人の立場にあることが多く、そうなった場合には未成年者と親はお互いに亡くなった人の財産を取り合う関係になります。そうなると、その未成年者を保護するための正しい判断ができなくなります。

その為、相続においては法定代理人に代えて特別代理人と呼ばれる人を決め、未成年者の代わりに遺産分割協議などを行います。これにより、未成年者の利益を保護するための法律行為が有効に行われることになるのです。なお、特別代理人は家庭裁判所に申立てをして選任されます。

特別代理人は、特に資格などは必要ありません。未成年者の利益を保護するために選任されることを考慮し、利害関係のない方で適当と思われる人を選ぶことになります。

8.相続の時効

相続の時効には、以下の4つの考え方があります。
 
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(1)相続放棄

相続が開始したのを知った時から3カ月を経過した時点で時効となります。

(2)遺産分割請求権

 被相続人が遺言を残していなかった場合、残された相続人の間で話し合いをして遺産を分割をします。このように話し合いで遺産を分割することを「遺産分割協議」と呼びます。
「遺産分割請求権」とは、共同で相続する人の各自が自分の相続分の内容を具体的に実現するために有する請求権のこと。遺産分割請求権に期間制限はないため、遺産分割をしなかったとしても、遺産分割請求権が時効によって消滅することはありません。
しかしながら、遺産分割が行われないと、遺産はいつまでも相続人全員の共有状態となり、遺産が不動産の場合には管理や将来売却する際に非常に面倒になります。ですから、遺産分割請求は絶対に早めに行うべきです。

(3)遺留分減殺請求権

相続人には、最低限の遺産を取得できる権利(遺留分)が保証されています。つまり、もし遺言によって相続財産を取得できない状況であったとしても、「遺留分減殺請求」をすることで相続分を請求できます。

遺留分減殺請求は弁護士に依頼して手続きします。なお、遺留分減殺請求の時効は1年です。遺言が発見されてから1年以内に遺留分減殺請求をしなければなりません。

(4)相続回復請求権

本来の相続人ではない人が遺産を相続し、本来の相続人が遺産を相続できなかった場合。本来の相続人は、相続人でない方に対し、「遺産を返してください」と請求することができます。これを「相続回復請求権」いい、時効は自分の相続権が侵害されていることを知った時から5年間、相続開始から20年間です。

9.保険を使った対策

メリット1: 非課税枠の活用

生命保険の死亡保険金は相続税の対象ですが、遺族の生活を守るために「500万円×法定相続人の数」だけ非課税枠が認められています。現金だとそのままの金額が相続税の対象になりますが、生命保険の死亡保険金で受け取ると非課税枠分を控除した金額に対して相続税が課されるため、現金で受け取るより税額が少なくなります。

メリット2: 円満な遺産分割

一般家庭に多い相続財産は自宅と預貯金、生命保険の死亡保険金です。生命保険は、明確な遺言書がなく遺産分割協議(遺産を誰に渡すかの話し合い)になっても、死亡保険金の受取人が決まっているので相続しやすいのです。遺言書に記載されている内容が、法定相続人が遺留分(最低限相続できる財産)を侵害した場合でも、死亡保険金は遺留分の対象にはなりません。遺したい人に確実にお金を渡せるので、親族間のトラブルを回避することができます。

メリット3: まとまった現金をすぐに調達可能 

生命保険を利用することで、葬儀費用や納税資金のために現金が必要となった場合にもすぐにお金の調達が可能となります。

金融機関の預金は、名義人の死亡時点で「相続財産」の扱いとなります。遺産分割協議が整うまでは、預金の引き出しができません。金融機関によって方法は異なりますが、預金を引き出すには遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書、戸籍謄本などの書類を提出する必要があるため、手続きに相当な時間がかかります。

これに対して死亡保険金は、受取人が請求手続きをすれば、5~10日程度で受取人が指定する口座に支払われます。加入する保険にもよりますが、一定期間経過した後に返戻率が105%程度になる商品も多いため、銀行に比べれば保険の方が、利息が高いと言えるでしょう。

10.タンス預金も相続税がかかる!

タンス預金とは、言葉の通り、銀行にお金を預けるのではなく、家のタンスなどに保管してあるお金を指します。このお金も相続税の申告をする際に含めて計算しなければなりません。詳細は下記を参照ください。

タンス預金のメリット・デメリット

11.相続税に影響する贈与税の計算方法

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相続税の節税をするためには、生前対策が重要となります。生前対策をする上で必要な知識となるのが贈与税の知識です。贈与税とは、個人が個人から贈与により現金、有価証券、不動産等の財産をもらった場合に財産をもらった人に課される税金のこと。1月1日から12月31日での1年間でもらった額が基礎控除額110万円以下であれば贈与税はかかりません(複数の人からもらった場合、合計が110万円以下であれば非課税)。

税額の計算は、

取得財産合計額(1月1日から12月31日での1年間でもらった額)-110万円(基礎控除額)

となります。平成27年1月1日以降の贈与税の税率表は以下の通りです。

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例えば、1月1日~12月31日までに、祖父から200万円、母から140万円もらった場合。下の計算の通り、24.5万円が贈与税の額となります。

340万円-110万円=230万円(課税価格)

230万円×15%(税率)-10万円(控除額)=24.5万円(贈与税額)

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12.贈与税の節税対策のまとめ

贈与税の計算方法を理解できたら、以降説明する6つの節税対策も覚えましょう。

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  1. 110万円の基礎控除: 贈与税は、1人が1月1日から12月31日までの間に取得した財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの金額に対してかかります。つまり、1年間に取得した財産の合計額が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も不要となります。
  2. 贈与税の配偶者控除: 夫婦間で居住用不動産の購入やその建築資金を贈与したときは、2000万円までは贈与税がかからないという特例。基礎控除を加えれば、2110万円までは税金を払わずに配偶者に贈与可能となります。注意点は、同一の配偶者間では一生に一度しか適用を受けることができません。また、この特例適用のためには、「夫婦の婚姻期間が20年以上であること」「贈与を受ける者が住む住宅または住宅を取得するための資金の贈与であること」「贈与を受けた者が、その翌年3月15日までに贈与により取得した不動産に居住し、その後も引き続き居住する見込みであること」が条件となります。
  3. 相続時精算課税制度: 生前に2,500万円まで贈与しても贈与税がかからない特別控除額のある制度です。この制度を一度選択すると、撤回はできません。さらに、同制度を利用する場合、相続時には相続財産の他にこの制度により贈与を受けた金額も加算して相続税を計算しなくてはなりません。
  4. 住宅取得資金贈与: 最大1,200万円までの住宅取得等資金贈与にかかる贈与税が非課税となります。基礎控除額をプラスすることで更に110万の合計1,310万円まで贈与税が非課税となります。対象は、父母および祖父母(直系尊属)からの贈与で、対象は贈与する年の1月1日に20歳以上の子・孫に限ります。適用要件は、平成33年12月31日までに契約した住宅取得に限りますが要件が非常に細かいので、専門家への確認をおすすめします。
  5. 教育資金贈与: 平成25年4月、「祖父母からの教育資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税制度」が開始となりました。この制度は、子1人につき1500万円までの贈与が非課税になる制度です。ただし、子が30歳までに使いきれず資金が口座に残った場合は、残額に対し贈与税が課税されることとなっております。
  6. 結婚・子育ての一括贈与: 結婚・子育て資金のために、20歳以上50歳未満の人(以下、「受贈者」)が金融機関等との一定の契約に基づき受贈者の直系尊属(父母や祖父母ら、以下「贈与者」)に贈与するうち、信託受益権又は金銭等の価額のうち1,000万円までの金額に相当する部分については、贈与税が非課税となります。ただし期間は平成27年4月1日から平成31年3月31日で、金融機関等を経由して「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出する必要があります。

13.夫婦間のお金の受け渡しも贈与に?

意外と知られていないのが、夫婦間のお金の受け渡しにも贈与税が発生することがあるという事実です。生活費の贈与は扶養義務を果たすためのものなので贈与税は発生しませんが、不動産所有権で実際の資金負担割合と所有権登記の持分割合が異なると、贈与税の課税対象になる可能性が。例えば3,000万円の住宅を夫が購入したが、所有権は夫婦で半々にした場合。夫が妻に1,500万円贈与したことになり、贈与税の対象になる可能性があります。相続税はじめてガイド--節税対策と税の計算方法を網羅的に解説!  ただし、婚姻期間が20年以上の夫婦において夫婦間での居住用不動産の購入、またはその建築資金を贈与したときは、2000万円までは贈与税がかからないという特例があり、これを「配偶者控除」と呼びます。さらに、基礎控除額の110万円を加えれば、2,110万円までは税金を払わずに配偶者に贈与可能となります。

配偶者控除を利用するためには、以下の要件をすべて満たす必要があるのでっ9人しておきましょう。

  1. 贈与者(贈与する人)は、婚姻の届出をした日から贈与を受けた日までの期間が 20 年以上である配偶者であること。
  2. 贈与を受けた財産は、国内にある居住用不動産又は国内にある居住用不動産の取得に充てるための金銭であること。
  3. 2の居住用不動産に現在居住している又は贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住する見込みであり、かつ、今後引き続きこの居住用不動産に居住する予定であること。
  4. 過去に今回の贈与者からの贈与について、この特例の適用を受けたことがないこと。

14.親からの借金が贈与になってしまう?

相続税はじめてガイド--節税対策と税の計算方法を網羅的に解説!

親からお金を借り、のちのち返済する予定で利息を全く支払っていないという場合、贈与税が発生する可能性があります。この場合、利子相当分は贈与とみなされてしまうのです。

どこでお金を借りても、一般的には利息が発生します。よって、親が子供に無利息でお金を貸している場合には、子供は利息相当額得をしたと考えます。その得をした無利息相当分に、贈与税がかかります。

相続税はじめてガイド--節税対策と税の計算方法を網羅的に解説!

ちなみに、仮に利息分のみを贈与と判定されてしまった場合にも1年で110万円までは贈与税が非課税という制度がありますので、利息相当が110万円以下であれば贈与税はかかりません。

親からお金を借りていても、状況によっては「もう返さなくてもよいよ」というケースもあるでしょう。これも、本来のお金の貸し借りではないため、借入金そのものに対して贈与税がかかる可能性があります。

15.贈与税の申告期限を守らないと罰則が?

暦年課税の場合

贈与税は1月1日から12月31日までの1年間を単位に課税されます。よって、この1年間に贈与を受けた財産の課税価格が基礎控除額の110万円を超え、税額が算出される人は贈与税の申告書を提出しなければなりません。
申告期限は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までです。納付期限も、申告期限と同じく翌年の3月15日までです。

相続時精算課税制度を選択した場合

相続時精算課税制度の適用を受ける方は必ず贈与税の申告書を提出しなければなりません。申告書の申告期限は、暦年課税の場合と同じく贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までです。納付する税金がある場合には、納付期限も、申告期限と同じく翌年の3月15日までです。
相続税はじめてガイド--節税対策と税の計算方法を網羅的に解説!

16.贈与税にも時効が

贈与をしたにもかかわらず、贈与税を支払わなくてもよくなる日のことを贈与税の時効と呼びます。贈与税の時効は贈与を行った時点から5年間です。贈与した時点から5年が経過すれば税金を支払わなくて良くなります。

ただし5年という時効は知らないうちに贈与していて、申告することを忘れていた場合です。悪質な場合には2年が追加され、7年が時効となります。

17.相続税の申告を忘れた場合

相続税の申告・納付は相続が発生したことを知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があります。この期限を過ぎてしまうと「無申告」となり、相続税以外に「無申告加算税」「延滞税」などの罰則の税金を納めることになる場合があります。

無申告加算税

無申告加算税は、相続税の申告期限内に相続税の申告を行わなかった場合に課される税金です。無申告加算税は、申告期限後にご自身で期限後申告をした場合は5%の無申告加算税が課されます。

もし、税務調査によって期限後申告が必要となった場合は、納税額のうち50万円までの部分には15%、50万円を超える部分には20%の無申告加算税が課されます。

延滞税

延滞税は以下のいずれかに該当する場合に発生します。

  • 無申告(申告・納税期限までに申告・納税を行っていない)
  • 期限後申告もしくは修正申告によって納付する税金がある人
  • 更生または決定の処分を受けており、納付する税金がある人

延滞税は納付期限の翌日から2カ月以内であれば原則年7.2%、2カ月を経過した日以後は原則として年14.6%の延滞税が課されます。

18.相続税は還付される可能性がある?

5年以内に相続税を納税したという人は、約7割の人に還付の可能性があります。国税庁のデータによると、平均で1件あたり約1200万円もの相続税が還付されています。つまり、1回目の相続税の申告が間違っていることが多いということです。税理士に頼んで相続税の申告したにも関わらず、もう一度訂正するために申告したら約1,200万円が還付されているのが実態です。

多額の相続税を納めた人は、ぜひ一度相続専門の税理士にご相談ください。

19.相続税の申告は専門家に依頼? 自分で??

相続税の申告は、自分で申告書類を作成して申告することももちろん可能です。しかし、確定申告と比較すると少し複雑な部分があるため、場合によっては税理士に依頼する方が良いケースもあります。

税理士に依頼したほうが良いケース

  • 基礎控除を超える額の相続財産がある
  • 相続財産に不動産が多く含まれる

このような場合、税理士に依頼したほうがよいでしょう。相続税の計算には特殊な財産評価方法を用いることが多く、特に相続財産に不動産がある場合は、正しい評価方法を理解して評価額を下げることで、相続税を抑えることができます。さらには、二次相続を想定した遺産分割の方法や相続税を抑えることができる特例など、知識や経験がないと判断が難しいことがたくさんあります。

また、相続税の申告書には税理士が署名捺印する欄が設けられています。税理士に依頼せず、ご自身で相続税の申告を行った場合、この欄が空欄となります。自分で申告をした場合、計算ミスや判断ミス、計上漏れなどが無いとは言い切れません。つまり、間違いがある可能性が高いという判断になり税務調査の対象となる可能性が非常に高くなります。

相続税の申告の専門家は税理士です。相続税申告を税理士に依頼する場合は、相続税の申告実績が年間100件以上の相続税専門の税理士に依頼することをお勧めします。