相続時精算課税制度は、平成27年に適用範囲が拡大し、利用しやすくなりました。ご利用をご検討中の方は是非ご覧下さい。
相続時精算課税制度の内容を確認しておきたい方は、「1.相続時精算課税制度って何?」から、改正点のみ興味のある方は、下記「2.相続時精算課税制度の改正点とは?」からご覧ください。
目次
1.相続時精算課税制度って何?

この制度は、親から子の世代への贈与をスムーズにすることを目的に作られたといわれております。
例えば、親が90歳で亡くなった際に子が財産を取得しても子供は70歳ほどになっているでしょう。
もっと早いうちに財産を子へ移行させることを目的に作られた制度が相続時精算課税制度です。
生前に贈与をした場合には2,500万円の贈与まで贈与税がかかりません。
その代わりに相続のときには、生前に贈与された財産と相続された財産を足した額に相続税がかかるという制度です。
2.相続時精算課税制度の改正点とは?
【贈与者の変更点】
改正前では、贈与者の範囲は、65歳以上の父母
改正後では、贈与者の範囲は、60歳以上の父母又は祖父母
【受遺者の変更点】
改正前では、受遺者の範囲は、20歳以上の推定相続人
改正後では、受遺者の範囲は、20歳以上の推定相続人又は孫
図でもまとめてみましたので、下表を参照ください。
【改正前】平成26年12月31日まで | |
贈与者 | 65歳以上の父母 |
受贈者 | 20歳以上の推定相続人 |
【改正後】 平成27年1月1日から | |
贈与者 | 60歳以上の父母 または祖父母 |
受贈者 | 20歳以上の推定相続人 または孫 |
3.相続時精算課税制度を選択するための要件とは?(相続税法21の9)
(1)適用対象者
①受贈者(贈与を受ける人)
次の全てに当てはまる必要があります。
(1) 次のいずれかに該当する者であること。
イ. 贈与を受けた時に日本国内に住所を有すること。
ロ. 贈与を受けた時に日本国内に住所を有しないものの日本国籍を有し、かつ、受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有したことがあること。
ハ. 贈与を受けた時に、日本国内に住所も日本国籍も有しないが、贈与者が日本国内に住所を有している。
(2) 贈与者の直系卑属である推定相続人であること。
(3) 贈与者の孫であること。
(4) 贈与を受けた年の1月1日現在において20歳以上であること。
※推定相続人である直系卑属というのは、例えば親からみて、親が死亡した場合に財産を相続することになる子がこれに該当します。(子が死亡している場合には、代襲相続人となる孫などが該当します。)
②贈与者
(2)適用対象となる財産等
(3)適用手続き
この制度を選択する場合、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間)に、税務署に、次の書類を添付し、贈与税の申告書に添付して提出しなければなりません。
- 贈与税の申告書(別表1・2を作成)
- 相続時精算課税選択届出書
- 住民票の写し
- 登記事項証明書
この届出書や申告書が決められた期限内に提出されなかった場合、その年は相続時精算課税制度が適用されませんので、注意が必要となります。
また、贈与財産の価額が特別控除の範囲内におさまっていて、納付すべき贈与税がなくても申告書等の提出が必要となります。
相続時精算課税制度を利用する場合には、必ず申告が必要です!
申告期限は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に、納税地の所轄税務署に「相続時精算課税選択届出書」を贈与税の申告書に添付して提出しなければなりません。
この点は暦年課税による贈与税の申告とは異なりますので、注意が必要となります。
「贈与税の申告書」「相続時精算課税選択届出」』は下記の国税庁のホームページにあります。
【贈与税の申告書】
【相続時精算課税選択届出書】
【上記3つの作成方法】
4.相続時精算課税を選択した場合の贈与税の計算方法は?
相続時精算課税制度を利用した場合、次の算式により納付税額を求めます。
(課税価格 - 特別控除額) × 税率 = 納付税額 |
特別控除額とは?
特定贈与者ごとの贈与税額の課税価格から、それぞれ次の①と②の金額のうちいずれか低い金額を控除します。
① 2,500万円 (既にこの特別控除を適用した金額がある場合はその合計金額を控除した残額) ② 特定贈与者ごとの贈与税の課税価格 |
税率は?
まとめ
相続時精算課税制度は改正により、範囲が拡大したことで利用しやすくなりました。
この制度は、将来の相続時を見据えて、制度を利用するか否かを判断しなければならないため知識が乏しい場合には、利用するのは難しいでしょう。
少しでも早く資産を贈与しておきたいという方は、利用して少しでも早く資産の贈与を受けたいと思いますが、損をしてしまう可能性もありますので、相続専門の税理士とご相談の上、制度を利用すべきかを検討するのが良いでしょう。
相続時精算課税制度については
『相続時精算課税制度と住宅取得等資金の非課税は併用可能?』
『相続時精算課税制度の6つのメリット8つのデメリット』でもご紹介しております。さらに詳しく知りたい方は、ご覧ください。