仮想通貨も相続税の対象に!家族が困らないための「下準備」とは?

仮想通貨も相続税の対象に!家族が困らないための「下準備」とは?

紙幣や硬貨などの物理的な貨幣のある「円」や「ドル」といった法定通貨と異なり、インターネット経由でデータのみで広く流通するデジタル通貨「仮想通貨(暗号資産)」。2016年に国からお金と同等の価値があると明言されて以降、贈与税や相続税の対象となっています。

もしあなたが仮想通貨を利用していて、いざというとき、何をどう下準備しておけば良いのでしょうか。家族が困らないために今からできることをご紹介します。

1.仮想通貨が相続の時に問題になりやすい背景

お金というのは何か、あなたは説明できますか。財布に入っている紙幣や硬貨を見せるのは簡単ですが、なぜそれで品物を買えるのか、考えたことはあるでしょうか。

自分が持たない何かを手に入れたいと思ったときに、かつて物と物の交換だけが全ての時代がありました。文明が複雑になるにつれ、手形として同じ価値と信じる貨幣が流通し、そして現在、国の枠組みや物理的な貨幣にとらわれない、自由な貨幣のジャンル「仮想通貨(暗号資産)」が流通しています。当初はお金のようなものという扱いであったものが、2016年に国からお金と同等の価値があると明言されて以降、贈与税や相続税の対象として扱われています。

仮想通貨も相続税の対象に!家族が困らないための「下準備」とは?

まず、第一に仮想通貨についての法整備が追いついていない現状があります。

例えば、急に父が亡くなった、としましょう。銀行に死亡届を出すのが通例です。父名義の銀行口座は凍結されます。亡くなった事実を隠して口座から預金を下ろすと、相続トラブルに発展するため、お勧めしません。口座が凍結されると、遺産分割協議の手続きが終わるまでは、家族であっても簡単には預金を引き出せません。これは相続法によって定められている遺産の保全処置です。

一方、仮想通貨は現時点でその法の縛りはありません。仮想通貨の取引を行う国内の運営会社によっては、銀行にならう形で「死亡届を受理したら口座を凍結し、相続の内訳が決まり次第、相続人の口座に移管する」としているところもありますが、会社の自主性に任されているのが現状です。

また、仮装通貨の評価も課題です。仮想通貨の種類や特性は様々なため、他の有価証券のように一概に相続時の時価で評価されるとも言い切れません。法が整備されるまで時間がかかるでしょう。

第二に、仮想通貨はその有無ですら推測するのは難しいという事情があります。

銀行口座は通帳やカードなどで、亡くなった人の口座の有無や銀行名を推測することができます。通帳やカードは、銀行が変わってもデザインが変わるだけで大きさや厚みなどの規格も変わらず、統一されているため、知らない銀行を利用していたとしても、特に問題なく問い合わせることができるでしょう。

仮想通貨は、利用するために「ウォレット(WALLET)」と呼ばれる電子上のアカウントが必要になります。直訳で「財布」のことで、仮想通貨というお金を入れておけるものです。このウォレットは、使い方によって大きく2種類に分かれています。

仮想通貨も相続税の対象に!家族が困らないための「下準備」とは?

ホットウォレットは、日常使いの財布のようなイメージです。インターネット上で接続され、決済や送金アプリなど、リアルタイムで送金するサービスを利用するときに使われます。これは、スマートフォンでデータだけで完結するため、利用に際して物理的なものは残りません。

コールドウォレットは、保管用の銀行口座のようなイメージです。インターネットから切り離され、利用時に必要な「秘密鍵」を物理的に持ちます。この「秘密鍵」を管理する媒体として、紙に書いたものは「ペーパーウォレット」、金属やコイン、USBメモリなど安全な専用デバイスで管理するものは「ハードウェアウォレット」と呼びます。「ペーパーウォレット」や「ハードウェアウォレット」は銀行でたとえると「通帳」のようなものと言えるでしょう。通帳の利用時に暗証番号が必要なのと同様、ペーパーウォレットやハードウェアウォレットの利用時にもパスワードが必要なことが多いようです。そして、仮想通貨や運営会社ごとに、この「通帳」の姿形は異なるのです。

【ペーパーウォレットのイメージ】

仮想通貨も相続税の対象に!家族が困らないための「下準備」とは?

【ハードウェアウォレットのイメージ】 仮想通貨も相続税の対象に!家族が困らないための「下準備」とは?

もし仮想通貨で資産保管をした場合、不正アクセスされにくいコールドウォレットで保管するでしょうから、「通帳」に当たるものが残されることは間違いありません。問題は銀行の預金通帳のように、形式が統一されていないことです。

ペーパーウォレットで仮想通貨を利用している人が、別の仮想通貨の独自のハードウェアウォレットを見たとして「この人は何らかの仮想通貨で資産を持っているな」とすぐに気付けるのか、わかりません。まして、仮想通貨を利用したことのない人は、ペーパーウォレットを見たとしても「何かのコンサートの半券かな?」と勘違いして廃棄してしまっても、不思議ではないでしょう。銀行通帳のような規格の統一性がないことで、仮想通貨を使っていることすらわからない可能性もあるのです。

通帳をなくしても、銀行口座がなくならないのと同様、引き出すための秘密鍵をなくしたりパスワードがわからなかったりしても、仮想通貨そのものがなくなるわけではありません。相続税はかかりますし、遺族が把握していないだけで、後から課税される追徴課税もあり得ます。

今後の相続では、仮想通貨の利用有無、どの仮想通貨を、どの運営会社を利用しているのかは大変重要な情報となるでしょう。

 

少なく申告してしまった場合の追徴課税「過少申告加算税」については 「知らなきゃヤバイ!相続税が無申告だった場合のリスク」 をご覧ください。

 

2.「自筆証書遺言書」で下準備しよう

仮想通貨を利用する時、自身が亡くなった時のことまで考える人はほとんどいないでしょう。しかし、自分が亡くなった時のことを考え、どんな資産があるか、といった財産目録をまとめておくことは大変重要です。

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本文は手書きで作成しなければなりませんが、財産目録をパソコンで作成、登記簿謄本コピー、通帳コピー等を添付し、遺言者の直筆の署名・捺印することで、有効となります。

また、2020年7月から自筆証書遺言は、法務局で保管してもらえるようになるのです。封をしていない状態の自筆証書遺言書を、下記の法務局に持ち込めば、データ化された遺言書の保管をお願いできるという制度です。

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遺言作成者はいつでも法務局で閲覧できますし、保管のとりやめもできます。相続が発生した際は、法務局で遺言があるかどうかを検索できます。この保管制度を利用した場合は、家庭裁判所での内容確認調査の手続き(検認)も不要となります。

通帳のコピーと同じ感覚で、仮想通貨のペーパーウォレットやハードウェアウォレットの画像、付随するパスワードを、そのまま財産目録に載せるのはおすすめしません。通帳の原本や印鑑などが求められる銀行と異なり、仮想通貨はそれらの情報から盗まれる可能性があります。

同様に家の目のつくところに、それらを保管するのも、現金を放置する以上の愚行です。タンス預金などの現金は、まだ紙幣という物理的な制約があります。札束を盗もうとすれば不自然なポケットの膨らみを人に見とがめられることがあるでしょうが、仮想通貨はそんな物理的な制約なしに、口座から全ての仮想通貨を引き出すことだってできるのです。

書き記すのは、あくまで仮想通貨の口座の存在だけにしましょう。遺言書に通帳のコピーの横に暗証番号を書き記さないのと同様、仮想通貨を引き出す時のパスワードも書いてはいけません。パスワードの類を伝えるなら、遺言書とは別の文書で、別の場所に厳重に保管することです。例えば、遺言書は信頼できる人に預け、銀行の貸金庫にペーパーウォレットのコピーを保管、家の金庫にパスワードの書かれた文書を保管する、といった具合です。

仮想通貨も相続税の対象に!家族が困らないための「下準備」とは?

遺言書はちょっと大げさかな…と抵抗のある方は、法的拘束力はないものの、自分の意思を知らせることができる「エンディングノート」を作ることをおすすめします。そこで、資産について簡単にまとめておくだけで、トラブルはかなり減るはずです。

 

自筆証書遺言について詳しく知りたい方は「2019年から自筆証書遺言が利用しやすくなる?どこがどう変わるのか!」をご覧ください。

 

エンディングノートについて詳しく知りたい方は「もしものときに役立つエンディングノートとは何か?」をご覧ください。

 

まとめ

新たな通貨に、新たな遺言書のあり方。相続にもデジタルの波は確実に押し寄せています。かつて縁起が悪いとネガティブなイメージを持たれていた遺言書やエンディングノートも、若い人が作ることも珍しくありません。震災以降、それまでの死生観を改めた人も多いということなのでしょう。

自身の「これまで」を振り返るつもりで作成し、5年程度のスパンで定期的に見直すことで見えてくる「これから」があるはずです。あなたの大切な人のために、今できることからはじめてみませんか。