亡くなった人の預金を下ろすには? 仮払い制度で引き出せるようになる??

亡くなった人の預金を下ろすには? 仮払い制度で引き出せるようになる??

相続が発生すると被相続人の口座が凍結することをご存知でしょうか。

口座が凍結してしまったらどんな問題が出てくるのでしょうか。
また、凍結前の対策(事前対策・事後対策)はどんなものがあるのでしょうか。
実は2018年7月6日に相続法(相続に関する民法の規定)が改正され、被相続人の預貯金の仮払い制度という制度が新たに創設されることになりました。

本記事では、口座が凍結することを想定して事前/事後にできる対策、また民法改正によって誕生した「預貯金債権の仮払い制度」についてもご紹介しています。

1.相続発生時は口座から預金を引き出しできない!?

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相続が開始すると、遺産分割協議が成立するまで預金口座が一旦凍結され、引出も入金することもできなくなります。
また、被相続人の預金は相続財産となり、相続が発生すると遺産分割が終了するまでは相続人の共有財産となります。
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口座からお金をおろすことができなくなると、電話代や電気料金などの口座振替もできなくなってしまうことになります。そのため、故人(亡くなった方)名義の預金が引き出せなくなり、生活費が支払えなくなってしまうという可能性もあるのです。
 
ローンがあった場合には、ローンの返済も滞ります。遺産分割が終了するめのローンの返済がストップすることから、その間の利息には、遅延利息が発生し、本来の利息よりも高い利息を支払わなくてはなりません。
 
遺産分割協議が成立するまでは口座が凍結することになるため、なるべく早く遺産分割協議に入り、完了する必要が出てきます。

(遺産分割協議について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。)

口座が凍結している場合であっても、お葬式代、入院費相当額の払い出しを応じてもらえるケースもあるようです。こちらは金融機関によって対応が異なる部分となりますので、金融機関に直接確認するようにしましょう。
 

2.遺産分割協議書が完成するまでにできる対応は?(事後対策)

 
上述のように、遺産分割協議書完成までは口座が凍結してしまいます。完成までの間『銀行指定の同意書』を提出し、引き出し可能にしておくことをオススメします。
 
『銀行指定の同意書』では、相続人全員が預金の引き出しに同意する旨、署名・実印による押印が必要となります。銀行の方に聞けば教えてくれますので、ここは心配する必要はないかと思います。 
 

3.生前の対策は?(事前対策)

(1)生命保険への加入

生命保険金については、相続税の課税対象とはなりますが、遺産分割協議の必要はありません。つまり、保険金の受取人が手続きを行うことで現金を受取ることができます。
 
現金を受取ることさえできれば、仮に口座が凍結したとしても生活費がなくなることはないため心配がなくなるでしょう。
 
また、生命保険には非課税枠があります。
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この非課税枠におさまれば、受け取った現金に税金が課されることなく全額受取ることが出来ます。
 
詳細は、
2.生命保険を利用した相続税対策のメリットは?に記載しておりますので、ご参照ください。
 

(2)相続が発生しそうな場合には、早めに普通預金から引き出しておく

定期預金の解約は、基本的には本人確認が必要となります。そのため、万が一にも相続が発生することが事前に予期できるのであれば、被相続人が元気なうちに預金を引き出しておくという選択肢もあります。
 

(参考)金融機関はなぜ死亡の事実を知ることができるのか?

市町村役場(市役所)に死亡届を提出すれば、金融機関に自動的に亡くなった旨の連絡がいくとお考えになる方が多いかもしれませんが、実はそうではありません。
金融機関は亡くなったことを家族から聞いたり、新聞の訃報欄などにより把握します。実際には、死亡した事実が金融機関に知られることなく、凍結されないままの口座も結構あるようです。
 

4.そもそも預金はなぜ凍結されるのか?

 
では、そもそもなぜ預金は凍結されるのでしょうか。簡単に言えば、銀行が相続の争いに巻き込まれたくないからです。なお、亡くなった方の預金は、亡くなった時点から相続財産となります。
銀行が預金を凍結させずに一部の相続人が勝手に預金を引き出すことが可能になってしまうと銀行も争いに巻き込まれるおそれがあるため、そのリスクを回避するために相続発生後に預金を凍結させることになっています。
 

5.口座の凍結を解除する方法とは?

 

では、口座の凍結を解除する方法はあるのでしょうか。ここでは、遺言書がある場合とない場合、また民法の改正によって誕生した仮払い制度について説明します。

(1)遺言書があるケース

公正証書遺言があり、預金を取得する人と遺言執行者が定められている場合には、手続きは簡単です。被相続人と遺言執行者関係の書類をそろえれば解約できます。

【解除手続の必要書類】
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※必要書類は、金融機関によって多少異なることがありますので、銀行の担当者に念のため確認するようにしてください。

(2)遺言書がないケース

遺産分割協議を行い、相続人全員で話し合いを行います。
誰が何を相続するかが決まれば解除することができます。
 
【解除手続の必要書類】
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※必要書類は、金融機関によって多少異なることがありますので、銀行の担当者に念のため確認するようにしてください。
※相続人全員で遺産分割協議を行う必要があるため、相続争いが発生した場合や、相続人の中に行方不明の方がいる場合などは、口座凍結解除することができません。
 

(3)民法改正による「預貯金の仮払い制度」の活用

前述のように、被相続人の口座が凍結されることによって相続人が葬儀代や被相続人の債務の支払いなどを一時的に建て替えることになり、相続人の生活が苦しくなってしまうケースもあります。

このような事態は以前から問題視されており、これを解消するために預貯金の仮払い制度が創設されることになりました。被相続人の預貯金の仮払いは、家庭裁判所で手続きを取る方法と、金融機関の窓口で行う方法があります。

ⅰ.家庭裁判所の手続きで仮払いする

家庭裁判所で仮払いの必要性が認められると、他の相続人の利益に影響がない範囲であれば家庭裁判所の判断で仮払いしてもらうことが出来ます。家庭裁判所での仮払いには下記の要件を満たしている必要があります。

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ⅱ.金融機関の窓口で仮払いする

金融機関の窓口での仮払いは、以下の算出式によって求められた金額が払い戻し可能な金額となります。

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例えば、被相続人の預貯金が300万円、相続人が長男と次男で長男が仮払いを行う場合、300万円×1/3×1/2=50万円となり、50万円は仮払いしてもらえることになります。

ただし、金融機関ごとに100万円~150万円程度の上限が設けられることになりますので、上限を超えた金額の仮払いは出来ません。

 

6.仮払いされた預貯金の扱い

 

家庭裁判所による手続きにせよ、金融機関による手続きにせよ、引き出した預貯金が相続財産であることには代わりはありません。

仮払いされた預貯金は、仮払いを行った相続人が遺産分割によって取得した財産とみなされます。

遺産分割が行われる際には、相続財産から控除して考えられることになるため注意してください。

 

まとめ

 

相続が発生すると被相続人の預金口座は凍結され、遺産分割が終了し、遺産分割協議書が完成するまでは預貯金の引き出しを行うことはできませんでした。

そのため、被相続人の葬儀費用や相続による債務の弁済などですぐにお金が必要な場合に、相続人が立て替える必要がありました。

生命保険など事前にできる対策もありますが、新たに誕生した預貯金の仮払い制度を利用することによって相続人の金銭的負担を軽減することが可能になりました。

しかし、これによって新たな問題が起こりうる可能性も十分に考えられるため、仮払い制度を利用する場合には他の相続人と情報の共有をきちんと行うなどの対処が必要となります。