相続時精算課税制度による生前贈与は遺留分に注意が必要。相続時精算課税制度と遺留分減殺請求について

相続時精算課税制度による生前贈与は遺留分に注意が必要。相続時精算課税制度と遺留分減殺請求について

遺留分とは一定の相続人に限り、最低限取得できる相続財産の取り分を言います。遺留分を持つ相続人の相続分が遺留分よりも少ない場合、その相続人は遺留分を取り返すための請求をすることが出来ます。

遺留分を取り返す請求を遺留分減殺請求と言いますが、遺留分減殺請求が行われると、財産を返してもらう方と財産を返す必要がある方との間で課税など様々な問題が浮上します。

特に、相続時精算課税制度による生前贈与を受けていた場合は注意が必要です。

1.遺留分と遺留分減殺請求について

(1)一定の相続人のみ対象となる遺留分

遺留分は相続人が最低限取得することができる財産の取り分を言います。とはいえ、遺留分は相続人ならばすべての人が持っている取り分という訳ではありません。

遺留分を持つ相続人は、被相続人の配偶者、第一順位の子、第二順位の直系尊属のみとなり、第三順位の兄弟姉妹には遺留分がありません。

相続時精算課税制度による生前贈与は遺留分に注意が必要。相続時精算課税制度と遺留分減殺請求について

(2)遺留分減殺請求

遺留分を持つ相続人が、遺留分よりも少ない相続分となった時に遺留分減殺請求を行うことで侵害された遺留分を取り返すことが出来ます。これを遺留分減殺請求と言います。

遺留分減殺請求の方法などについて、特別な決まりがあるわけではありません。そのため、基本的には口頭で伝えることでも有効となりますが、「言った」「言わない」などで後々、トラブルになる可能性があるため、書面による通知を行うことが一般的です。

また、遺留分減殺請求には期限があります。

引用:民法 第1042条

(減殺請求権の期間の制限)

減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

つまり、自分が相続人であることを知り、さらに遺留分が侵害されていることを知った日から1年以内に遺留分減殺請求を行う必要があります。

上記の他、相続開始から10年以上が経過している場合には遺留分減殺請求は出来ないことになります。

2.相続時精算課税制度について

相続時精算課税制度とは贈与の方法の一つです。相続時精算課税制度を選択すると、総額で2,500万円までの贈与であれば贈与税は課税されません。2,500万円を超えたところから一律20%の贈与税が課税されます。

2,500万円まで贈与税は課税されませんが、その名の通り、相続が発生した時に、相続時精算課税制度によって受けた2,500万円までの贈与は相続税の課税対象になります。

相続時精算課税制度による生前贈与は遺留分に注意が必要。相続時精算課税制度と遺留分減殺請求について

相続時精算課税制度についての詳細は下記をご確認ください。

相続時精算課税制度は生前贈与に有効か?!相続時精算課税制度を完璧に理解しよう!

3.生前贈与と遺留分減殺請求

(1)贈与と遺留分

遺留分は一定の相続人が最低限取得することができる相続分のことを言いますが、仮に被相続人が愛人などに生前にすべての財産を贈与してしまった場合、相続財産が0になる可能性があります。そうなると遺留分を持っていても財産がないということになってしまいます。そこで、被相続人が生前にすべての財産を贈与してしまった場合でも、贈与財産も含めて遺留分を請求できるような仕組みになっています。とはいえ、すべての生前贈与が遺留分の対象となるわけではありません。遺留分の対象となる生前贈与は以下の3つです。

相続時精算課税制度による生前贈与は遺留分に注意が必要。相続時精算課税制度と遺留分減殺請求について  相続時精算課税制度による生前贈与は遺留分に注意が必要。相続時精算課税制度と遺留分減殺請求について  相続時精算課税制度による生前贈与は遺留分に注意が必要。相続時精算課税制度と遺留分減殺請求について

(2)相続人への生前贈与は遺留分の対象となる

上記で説明した3つの贈与のうち、上2つは、相続人以外の第三者が受け取った贈与が対象となります。相続人が受けた贈与に関しては、すべて遺留分減殺請求の対象となるという点に注意が必要です。特に、相続時精算課税制度を利用して生前贈与を受けた場合、遺留分減殺請求の対象となる可能性が高くなります。

4.相続時精算課税制度で遺留分減殺請求された場合の手続きの注意点

相続時精算課税制度を利用していた方が遺留分減殺請求をされた場合、請求された方は贈与税の請求した方は相続税の修正申告などの手続きが必要となります。

(1)相続時精算課税制度を利用した方で財産を返還する方

相続時精算課税制度を利用して受けた贈与は、贈与税の申告が行われています。また、2,500万円を超えた贈与を受けた場合、贈与税の納税も行っています。

相続時精算課税制度によって受けた贈与は遺留分減殺請求の対象となった場合、贈与を受けた財産を返還することになりますから、贈与を受けた財産が少なくなるということになります。場合によっては、贈与税を払いすぎている可能性も出てきます。

そのため、贈与税の更生の請求を行う必要があります。

〇更生の請求の注意点

更生の請求を行う際に用いる金額は遺留分減殺請求によって返還する金額ではありません。贈与税の計算のやり直しとなりますので、贈与時の金額によって計算する必要があるため注意してください。

相続時精算課税制度による生前贈与は遺留分に注意が必要。相続時精算課税制度と遺留分減殺請求について

〇相続税の計算のやり直しにも注意

相続時精算課税制度を利用している場合、生前贈与を受けた財産は相続税の課税対象となります。この際に、相続時精算課税制度により相続税の課税対象に含まれる生前贈与の額は更生の請求を行った金額で算出する必要があります。

(2)相続時精算課税制度を利用している人に財産の返還を求める方

遺留分減殺請求によって取り返した財産は、被相続人の相続財産です。そのため、遺留分減殺請求によって取り返した財産であっても相続税の課税対象となり、相続税の申告・納税が必要となります。

遺留分減殺請求の期限と相続税の申告期限が異なるため、遺留分減殺請求による返還を受けた時にはすでに相続税の申告・納税が終了している可能性がありますが、そのような場合には修正申告や期限後申告を行うことが可能です。

相続税の計算を行う際に利用する金額は相続開始時の時価となります。返還する側とは異なるため注意が必要です。

まとめ

相続人の生前贈与は遺留分の対象となります。そのため、遺留分減殺請求の対象となる可能性があることを覚えておきましょう。とくに相続時精算課税を利用している場合、遺留分減殺請求後の更生の請求などの手続きが少し複雑になります。

遺留分減殺請求後の手続き等に関しては相続に精通した税理士に相談しましょう。