相続税法?民法?相続に絡む「民法」と「税法」の違いを紹介します!!

相続税法?民法?相続に絡む「民法」と「税法」の違いを紹介します!!



私達は日頃から様々な法律の元に暮らしています。そして、様々な法律には相続にまつわる決まりも定められています。しかし、相続に絡む法律は「民法」と「税法」の2つの種類があり、その結果、ちょっと分かりづらくなっている部分があります。

今回は、相続に絡む「民法」と「税法」で覚えておいた方が良い違いをご紹介します。

1.民法と税法の定義

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民法は、個人間や法人間、個人と法人などの私人同士の権利関係等のルールを定めています。現在の民法は、総則・物権・債権・親族・相続で構成されています。

一方、税法は租税に関する法律の総称で、相続に関連する税法は「相続税法」と言います。

相続税法は相続税と贈与税の納税義務者や相続税や贈与税の対象となる財産の範囲、税額の計算方法、申告・納付に関する手続きなどについて定められています。

つまり、相続では相続による私人同士の権利関係のルールを民法が定め、相続税にまつわるルールを相続税法が定めているという形になります。

2.「民法」と「税法」で異なる扱いをする3つの項目

相続では、「法定相続人が誰か」「相続財産は何か」「相続税はいくらか」を確認する必要があります。この3つの項目の中で、民法と税法での違いを確認して行きましょう。

(1)法定相続人が誰か「法定相続人に含まれるかどうか」

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相続では、財産を残して亡くなる方を被相続人、相続によって財産を引き継ぐ人を相続人と言います。

法定相続人とは民法によって定められている相続人を示します。相続人についての定義は民法の887条・889条・890条にてそれぞれ以下のように定められています。

引用:民法

(子及びその代襲者等の相続権)

第887条

1.被相続人の子は、相続人となる。

2.被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

3.前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)

第889条
1.次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一  被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二  被相続人の兄弟姉妹
2.第887条第2項の規定は、前項第二号の場合について準用する。

(配偶者の相続権)

第890条

被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

上記のように、民法では相続人は誰になるかを明確に示しています。民法によって定められている相続人が法定相続人となります。そして、この法定相続人の人数が税法にも関係しています。

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税法では基礎控除や概算の相続税を計算する際に、民法で定められている法定相続人の人数が関係しています。法定相続人が誰になるかという点は民法と税法において違いはありません。

しかし、被相続人に養子がいる場合と相続人の中に相続放棄を選択している方がいる場合、民法と税法では法定相続人の考え方に少し違いが生じます。

◯ 法定相続人に含むことが出来る養子の人数

被相続人が養子を迎えている場合、民法では養子の人数に対する制限はありません。つまり、養子が何人いてもすべて相続人として相続することは出来ます。

しかし、税法では法定相続人に含むことが出来る養子の数には決まりがあります。

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被相続人に実子がいる場合は法定相続人に含めることが出来る養子は1人までとなります。上記のように複数養子がいる場合、すべての養子が財産を相続することは出来ますが、相続税の計算を行う上で基礎控除等を算出する際の法定相続人の人数としては1人となります。

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被相続人に実子がいない場合は、法定相続人に含むことができる養子は2人となります。

また、以下の要件に当てはまる場合には実子と同じ扱いになり、養子ではなく実子として法定相続人に含まれることになります。

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◯ 相続放棄を選択している相続人の扱い

相続放棄とはその相続によって財産等を相続する権利を放棄することを言います。相続放棄に関しては民法では以下のように定めています。

引用:民法

第939条

(相続の放棄の効力)

相続を放棄した者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

つまり、民法上では相続放棄を行った人は相続とは無関係となり相続人ではないということになります。

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税法上でも、相続放棄を行った人が相続人ではないということに違いはありません。しかし、法定相続人の人数に関しては、相続放棄がなかったものとみなし法定相続人の人数に含むことになっています。

例えば、相続人は配偶者と子2人、そのうち子1人が相続放棄をした場合であっても、法定相続人は相続の放棄がなかったこととになるため、配偶者と子2人の3人となります。

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ちなみに、死亡保険金や死亡退職金は相続放棄を行っていても受取人になることは出来ます。死亡保険金や死亡退職金には非課税枠(500万円×法定相続人の数)があり、この法定相続人の数は相続放棄した方も含むことになりますが、相続放棄を行った人が死亡保険金や死亡退職金を受け取った場合には相続人ではないため、非課税枠の適用は出来ません。

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(2)相続財産は何か「みなし相続財産と生前贈与の扱い」

相続財産とは被相続人が亡くなった時点で保有していたすべての財産となります。この相続財産の範囲についても民法と税法では違いが生じます。

◯ 相続財産とみなされる「みなし相続財産」

みなし相続財産とは、本来は相続財産ではないけれど相続財産とみなして相続税の計算をしますよ。という意味の財産です。

具体的には、被相続人の死亡保険金や死亡退職金等が該当します。

最初にお伝えしたように、相続財産は「被相続人が亡くなった時点で保有していたすべての財産」となるため、被相続人が亡くなった後に受け取ることになる死亡保険金や死亡退職金等は、本来、被相続人の保有していた財産には含まれません。

民法上では受取人固有の財産という扱いになります。したがって、誰が何を相続するかを話合う遺産分割協議の対象に含まれることもありません。

しかし、税法では、死亡保険金や死亡退職金等は被相続人が亡くなったことによって支給される金銭であることから、相続財産とみなし、相続税の課税対象とすることを定めています。

つまり、遺産分割等の対象とはならないけれど、受け取った人には相続税が課税されるから相続税を計算するときは相続財産に含めて計算してね。ということになります。

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◯ 被相続人の生前に受けた贈与について

生前贈与については少しややこしい部分があり、誤解を生じやすい内容です。まずは、わかりやすい税法からご説明します。

-相続税法の生前贈与-

相続税法では、被相続人が亡くなる前3年以内に行った贈与に関しては、相続財産として相続税の課税対象とすることを定めています。

「3年加算のルール」などと言われることがあります。つまり、3年以上前に受けた贈与に関しては、相続財産には含まれないため相続税の計算上はまったく関係ないということになります。

-民法での生前贈与-

民法では相続人の法定相続分や遺留分を定めています。この法定相続分や遺留分を計算するためには、相続財産がいくらかということを明確にする必要があります。

この際に用いられる相続財産の場合には「生前贈与」は「特別受益」という扱いになり、相続開始前3年以内など期間の定めなく、過去に受けた贈与はすべて相続財産に含んで計算することになります。

民法の原則は相続人の公平な遺産分割です。そのため、特別受益と判断される贈与に関しては、受益者の法定相続分から差し引くことを定めています。

引用:民法

(特別受益の相続分)

第903条

1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

2.遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。

3.被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

第904条

前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。

(3)相続税はいくらか「財産の評価方法」

民法では、遺産分割協議における財産の分割では、相続人同士が納得していれば良いということになるため、財産の価値はそこまで重要な意味を持っていません。

しかし、先にもご説明させていたただいたように、遺留分等を考えて遺産分割を行う場合には、相続財産の価値も考慮する必要があります。このような際に用いられる財産の評価方法は、基本的には遺産分割協議時の時価で考えることになります。

一方の税法では相続財産は相続税の課税対象となることから、評価方法がどうでも良いというわけには行きません。そのため、相続税法では財産の評価方法の原則を以下のように定めています。

引用:相続税法

(評価の原則)

第22条

この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

税法では上記のように、財産を取得した時点での時価と定められていますが、ここがポイントで、相続税法で示す時価は、相続税評価額によって求められた金額となりっます。

時価とは言えど、実際の取引価格だけでなく、財産評価基本通達に基づいて計算した金額も含まれることとなります。

例えば、不動産の場合には、固定資産税評価額や路線価、倍率などを用いて相続税評価額を算出します。

まとめ

さて、今回は相続にまつわる民法と税法の違いをご紹介しました。

民法は遺産分割など相続人同士の権利等に関するルールが定められています。一方の相続税法は相続税を計算するためのルールや相続税の納税に関するルールなどが定められています。

相続が発生すると、この2つのルールを意識しながら相続税の申告や納税を行う必要があります。ちなみに、相続税の申告・納付は相続発生から10ヶ月以内となり、納税は現金一括納付が原則となります。

相続にまつわる疑問やお悩みは専門家に相談し、スムーズに手続きを進めていきましょう。