相続放棄をすると、死亡保険金が取得できるのか?
死亡保険金を取得した後に、相続放棄はできるのか?
というご質問はよくありますが、実際どうなのでしょうか?
よくあるご質問を解説していきます。
目次
質問:妻が亡くなり死亡保険金を受け取りましたが、妻が多額の借金を背負っていました。保険を受け取った後でも相続放棄できますか?
回答
保険契約の受取人がご質問者様であれば、死亡保険金はあなたのものなので相続放棄も可能です。
民法896条により、相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する、とされています。
そのため、借金まで承継したくない場合には、財産も債務も相続しない=相続放棄をしたいが、ご質問者様は、相続財産の一部を受け取ってしまったために、相続放棄ができずに債務も引き継がなければならないのではないか、とご心配なのだと思います。
しかし、死亡保険金の受取人がご質問者様になっていれば、死亡保険金を受け取りつつ、相続放棄をすることも可能です。
相続放棄ができるのか、できないのか、重要なポイントが2つありますので、これから説明していきましょう。
回答の解説①:保険契約の受取人が誰なのか
重要なポイントの1つ目は、「保険契約の受取人が誰なのか」ということです。
加入されていた保険が死亡保険金など、死亡を理由として受け取る保険金については、受取人が指定してあることがほとんどだと思います。
逆に、入院給付金など、病気による入院や手術などを理由として受け取る保険金については、被相続人(亡くなられた方)が受取人であることが多いと思います。
被相続人がご加入されていた保険契約について、内容をよくご確認頂き、次のどのパターンに当てはまるか見てみましょう。
(1)受取人が指定してある場合
受取人として妻や夫、子供の名前など、特定の人の名前を指定してある場合がこれに当たります。
この場合は、その特定の人の固有の財産となりますので、相続財産には含まれません。
相続財産に含まれないので、既に保険金を受け取っていたとしても、相続放棄ができるということになります。
(2)受取人が指定されていなかった場合又は単に相続人となっていた場合
このような場合でも、相続人のそれぞれが固有に保険金の請求権を持つと解されるため、(1)と同様に相続財産とはならず、既に保険金を受け取っていたとしても、相続放棄ができるということになります。
(3)受取人が被相続人になっていた場合
この場合は、相続財産に含まれることになりますので、保険金を既に受け取ってしまっていた場合には相続放棄ができない=単純承認したということになります。
詳しい内容については、次の重要なポイント2つ目を見ていきましょう。
回答の解説②:法定単純承認について
まず、単純承認とは何か、ということですが、民法896条に基づき、被相続人の財産及び債務の一切を包括的に相続することをいいます。
そして、法定単純承認とは、相続人が行なった行為により単純承認したとみなされることをいいます。
それでは、法定単純承認にあたる場合とはどのような場合なのでしょうか?
民法921条により、次のような場合に法定単純承認をしたことになります。
(1)相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき
(2)相続人が相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、単純承認、限定承認又は相続放棄のいずれもしなかった場合
(3)相続人が限定承認又は相続放棄をした後でも、相続財産の全部又は一部を隠したり、使ってしまったり、悪意で相続財産の目録に記載しなかった場合
「(受取人が被相続人である)保険金を受け取った」という行為は、(1)の相続人が相続財産の一部を処分した場合にあたるので、法定単純承認をしたということになります。
法定単純承認をした以上、債務も引き継がなければならない=相続放棄できないことになります。
まとめると、次のようになります。
(1)受取人が被相続人である保険金をすでに受け取ってしまった場合には、法定単純承認をしたことになるので、相続放棄ができない。
(2)受取人が特定の人や、指定がない保険金をすでに受け取ってしまった場合には、相続財産にはならないため、相続放棄することができる。
まとめ
類似論点として、下記のサイトがありますので、あわせてご確認ください。