退職する際に受け取ることができる退職金は、長年の勤労に対する報酬という意味合いもあることから、税金の負担が軽くなるように配慮されています。
退職金は税制上優遇されており、退職金から退職所得控除額を控除した金額の2分の1にのみ課税されることになります。
では、役員の退職金の税金はどれだけ優遇されているのでしょうか?
目次
1.役員と退職金
まずは役員と退職金の定義から見ていきましょう。
(1)役員
役員とは以下のいずれかに該当する人を指します。
・法人税法第2条第15号に規定される役員
・国会議員および地方公共団体の議会の議員
・国家公務員および地方公務員
ひとつ目の「法人税法第2条第15号に規定される役員」とは、具体的には法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事および清算人です。
また法人の経営に従事している人のうち政令で定める「みなし役員」も含まれます。ポイントは「法人税法上の役員」であることです。
(2)退職金
退職金とは、退職した労働者に対して支払われる金銭のことをいいます。
法的には賃金の後払い的な性格を持ち、長年勤めたことに対するねぎらいや、退職後の生活を保障するなどの意味合いがあります。
退職所得控除の対象となる退職金には、会社から受け取る退職手当のほかに生命保険会社や信託会社から支払われる退職一時金や死亡退職金を含めることができます。
2.役員退職金にかかる税金の計算式
まず、課税対象となる役員の退職所得を計算します。
退職所得 = (退職金- 退職所得控除額)×1/2
退職金は、保険会社や年金契約にて受け取った退職一時金などを含む「退職する際に受けった所得総額」を指します。
その際、本人が過去に支払った保険料や掛け金は退職時に受け取った金額から差し引いた上で計算することができます。
退職所得控除額は別途計算式があり、退職者の勤続年数が20年以上か20年以下かによって求め方が変わります。
そして最後にある2分の1という数字がこの役員の退職所得控除における最大の特徴で、大きく税率負担を軽減してくれる部分になります。
退職所得の金額が決定したら、次は所得税額です。上記で求めた退職所得額を元に以下の計算式にて役員退職金の所得税額を算出します。
所得税額 = 退職所得×所得税の税率 – 控除額
なお所得税の税率と控除額は、国税庁より発表されている所得税の早見表にて確認できます。
退職所得の計算については、下記サイトで詳しく記載しておりますので、ご確認ください。 |
3.役員の退職所得控除が適用されないケース
税法上優遇されるこの2分の1課税ですが、平成25年に制度が見直され、役員としての勤続年数が5年以下の場合には適用されなくなりました。
日本では超過累進課税が採用されているため、役員のような高額所得者は所得が多ければ多いほど税金も高くなってしまいます。
そのことを踏まえ、老後の生活を支える意味もある退職金については税金の負担を軽くしようというのがこの控除の目的となっています。
しかし短期間の任期を繰り返すなど不当に恩恵をうける事例が指摘されていたことから、勤続年数が5年以下の人については「特定役員」と別途規定を設けて退職金への課税が強化されました。
具体的には以下のような違いが出てきます。
退職金2000万円、退職所得控除額400万円の場合
改正前…[2000万円 - 400万円]×1/2 = 800万円 800万円に対して課税
改正後…[2000万円 – 400万円] = 1600万円 1600万円に対して課税
4.法人会社にとってのメリット
役員退職金は法人会社にとっても損金算入として扱うことができるため、税制上のメリットがあります。損金とは、簡単にいうと会社が活動する過程で発生した支出のことで、税金を計算する際に経費として収益から差し引くことができます。つまりその分支払うべき税金が減らすことができるのです。
ただし同族会社等において税金を調整する目的で不当に高額な退職金を設定するケースもあるため、損金算入として認められるのは税法上過大とみなされない程度の適正な金額である必要があります。その判断は、役員が事業に従事した期間、退職の事情、そして事業と規模が同程度の他の会社における役員退職金の金額などを参考に決定されます。
まとめ
役員の退職金に絡む論点をご紹介させて頂きました。
退職金を上手に利用することで、法人も個人も節税することが可能ですので、節税を検討している方は、専門家に相談することをオススメします。
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